老化と新たな時間の創造
また新しい年がやってきた。午年というのは飛躍の年になるそうだから、きっとみなさんには素晴らしい一年でありますよう。
私たち人間と同じ様に、一枚の絵画はその制作が始まった時点で、いいやもっと言えば、そこに塗られた絵の具やキャンバスや画用紙が出来上がった瞬間から、そこにあるすべてのものが朽ち果てるまで老化を止めることはない。老化(劣化)は等しく絶対的だ。
私たちが作り出したものには、人間の様な再生機能はないから、傷ついて放っておけば治らない。私たち修復家の仕事は、その自然の掟とも言うべき、老化や怪我、病気に何らかの手を加え、その命を少しでも先送りにしようとする行為であり、自然に抗い、時の流れに逆らう行動である。
しかし、その行動の実際は、傷つき、失った部分に、例えば、歯科医が虫歯を削った後に金属や合成樹脂を埋めるような、見た目を整え、なんとか機能を維持できるようにするだけの対処療法(病気の根本原因を治すのではなく、現れている痛み・発熱・咳などの症状を和らげたり、一時的に楽にしたりする治療法 )であり、そこに覆われた損傷は決してなくなることがない。
そして、私たちが加えた処理が、そこに加えた物が、また新たな老化を始めるのである。イタチごっことは言わないが、まるでタイムマシーンで異なる時空間に行って、帰ってきた時には二つの時の流れが生まれてしまうかの様に、私たちの仕事は老化の掟を破って時の流れに逆らい、新たな時の流れを、老化の掟を加える仕事なのである。

