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2020年8月20日 (木)

裏打ちをしてはならない

 絵の具というのは色の元である顔料や染料に接着剤を加えたものである。基本的に、この接着剤がないと、絵の具自体も固まらないし、画布や画用紙にもくっつかない。

日本の伝統的な工法によって制作される浮世絵版画などは、この接着剤成分がほとんど入っていない。版木や画用紙への固着を助けるために少量の糊を加えることもあるようだが、基本的に、十分な接着剤は与えられず、版木に乗せた絵の具を馬簾を使ってゴシゴシと擦り付けているだけなのである。だから、こういった版画は水分に敏感に反応し、ちょっとした水を加えるだけで絵の具が容易に溶けだし、滲む。

かつて浮世絵を収集していた愛好家、コレクター達は、冊子の形状に束ねて保管、利用していたものも少なくなかった。額装する際に、ベニヤ板などに裏面全体をべったりと接着してしまった最悪な例もあるけれど、冊子にする際に、両面から鑑賞できるように二枚の浮世絵を背中合わせで糊付けしたり、版画用紙の強度を上げるために裏打ちをしてしまうと、糊の水分で背中合わせで相互の色が移りあったり、裏打ちした紙に絵の具が吸収されてしまい、画面の色が薄くなってしまう。

伝統的技法で制作された版画は近年、裏面も馬簾の使い方などを見るため観察の対象となっている。兎にも角にも、伝統的な版画には不用意に水分を与えたり、糊付けも、裏打ちもしてはならない。

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