下張りが肝心
近年の東洋絵画は厚手の紙に描かれることが多く、たいていは木製のパネル(ベニヤ板の裏面に木枠を取り付けたもの)に固定され、額装幀されて利用される。画用紙をパネルに固定する際には、必ず和紙などで何層かの下張りをする必要があるが、この基礎工事をしないで作品を直接固定すると、後に修復が必要となった際に分離が困難になるし、作品に大きな損傷を及ぼす危険性も高くなる。
大きな絵画作品になると、パネルに張り込んだ後の画用紙の緊張も高くなるため、下張りをキチンとしておかないと裂傷が生じやすくなり、絵の具が厚く塗られた絵画も柔軟性がないので亀裂が生じやすい。パネルに利用されるベニヤ板もクセモノで、ベニヤ板の生産時に使用される接着剤や防虫剤からガスが発生し、絵の具などに変色を来す。さらにベニヤ板は経年を得ると変色をし、その色素が画用紙に転移し汚染させてしまうこともある。
貴重な作品にはベニヤ板製のパネルは利用を避けるべきではあるが、安価で必要な強度を得られるために利用者は多い。利用する場合は作品を直接接触させない様、中性紙などでバリア層を形成し、そしてなおしっかりとパネルに固定出来る様、下張り施工は欠かせない。
◎画面に亀裂が生じた例。
◎ベニヤ板による汚損。
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