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2018年8月

2018年8月21日 (火)

下張りが肝心

近年の東洋絵画は厚手の紙に描かれることが多く、たいていは木製のパネル(ベニヤ板の裏面に木枠を取り付けたもの)に固定され、額装幀されて利用される。画用紙をパネルに固定する際には、必ず和紙などで何層かの下張りをする必要があるが、この基礎工事をしないで作品を直接固定すると、後に修復が必要となった際に分離が困難になるし、作品に大きな損傷を及ぼす危険性も高くなる。

大きな絵画作品になると、パネルに張り込んだ後の画用紙の緊張も高くなるため、下張りをキチンとしておかないと裂傷が生じやすくなり、絵の具が厚く塗られた絵画も柔軟性がないので亀裂が生じやすい。パネルに利用されるベニヤ板もクセモノで、ベニヤ板の生産時に使用される接着剤や防虫剤からガスが発生し、絵の具などに変色を来す。さらにベニヤ板は経年を得ると変色をし、その色素が画用紙に転移し汚染させてしまうこともある。

貴重な作品にはベニヤ板製のパネルは利用を避けるべきではあるが、安価で必要な強度を得られるために利用者は多い。利用する場合は作品を直接接触させない様、中性紙などでバリア層を形成し、そしてなおしっかりとパネルに固定出来る様、下張り施工は欠かせない。


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◎画面に亀裂が生じた例。


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◎ベニヤ板による汚損。

2018年8月 3日 (金)

屏風はソコから傷んでくる

大きくてかさばる美術品は、利用されなくなると部屋の隅や押し入れ、旧家であれば納戸や蔵の隅に長く放置されることも多いようだ。こういった収納場所は光も射さないので、終日暗くて、光のあたらないのは作品にとっては良いことではあるけれど、ほかの場所から比べると温度が低くなりがちだから、湿度も高く、空気も流動しない様な場所だと黴も繁殖しやすい。今預かっている屏風も、ずっと閉じられたままで、よろしくない環境に長く置かれた様子。屏風は閉じておくと作品自体は外気に触れにくくなるので、幸い被害も少ないことはあるけれど、屏風を閉じた際に外装となる部分(屏風の裏面=尾背や左右の面が露出することになる)には損傷が大きくなる。

冷たい空気、湿度の多い空気(当然重いので)は低い所に滞留するので、そんな場所で長く放置をしておくると、屏風は下方から帯湿し、黴が生えたり、湿気によって接着剤が緩んで糊離れが生じたり、作品(画用紙や画布)や装幀材料も剥離してくる。屏風は左右と天地に漆を塗った細い縁が装着されるが、底に装着された縁は床で擦れ、傷つくことも多く、そこから縁の内部に湿気が入り込み、また黴などに犯されると、漆の塗装膜はどんどん剥がれ落ちてゆく。

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今年は猛暑というか、酷暑というか、全国的に異常な暑さが続いており、熱に弱い樹脂製の製品が変形するなどといった情報も聞く。大切な絵画や美術品がどこかの部屋か物置の片隅に長く放置されていたら、先ずは目通し。点検をしてみよう。

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