改装時の注意
古い書画は幾度となく改装や修理が施されてることが多い。東洋絵画の多くは西洋絵画とは異なり、何層かの裏打ちが施され、掛軸や屏風などに作品本体となる画用紙が糊付けされていて、簡単には作品本体(=絵の具が塗布された画用紙や画布)を分離出来ない。改装時にはこの糊付けされた装幀材料を取り除き、古い裏打紙を湿らせて取り除く必要がある。
解装(解体)時、とくに慎重におこなわなければならないのが、肌上げ【はだあげ】と呼ばれる作業で、作品直下、背面に接着された裏打紙の除去。通常、水溶性の正麩糊【しょうふのり】で接着された裏打紙は、湿らせることで接着剤が溶解し、除去することが出来るが、合成接着剤を使っていたり、濃度の高い接着剤が使用されている様な場合には除去が難しくなる。ましてや作品の画用紙が経年によって脆弱化している様な場合には、紙の繊維が痛んでおり、不用意に肌上げをおこなうと裏打紙ごと画用紙繊維を持ち上げてしまい、繊維のとられた部分は薄くなってしまうことになる。痛んだまま装幀された作品の解体はとくに注意が必要で、さらに損傷を広げてしまわないように、肌揚げ時には裏打紙と作品画用紙の質や色の違いを確認し、ゆっくりと慎重に、確実に作業をおこなう必要がある。
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