サクションテーブルを使った水洗
先週から、薄手の紙に描かれた絵画の水性洗浄処置をおこなっている。洗浄処置の方法は色々あるが、今回はサクションテーブルを使った洗浄処置をおこなう。
サクションテーブルは天板に細かい穴がたくさんあり、大型のバキュームクリーナーを接続して使用する吸引装置。この上に敷き紙、作品、養生紙(不織布)の順に重ね、上から精製水、または純水などをスプレーし、溶け出した汚染物質を水ごと強制的に吸引除去する。この装置を使うメリットは、短時間で画用紙の芯部まで洗浄液を染み込ませ、さらに一気に吸収出来ること。一方、この装置を使うデメリットもあって、上に置いた作品が装置の利用中、ちょうどエアコンなどに使われるフィルターのような状態になり、大気中に浮遊している細かな塵や埃などを吸着させてしまう点。このことを避けるため、作業環境を整えることはもちろんであるが、作業は出来るだけ短時間でおこない、部分的な処置が出来る場合は処置部以外をカバー(フィルムなどで覆う)したり、作品上に紙や不織布などを置いて、直接作品に大気が触れないように(作品を覆った紙や布に塵埃を吸着させるように)する。もちろん、水分を使うからには、描画材料が水に溶けないことは必須条件となり、事前の調査は十分におこなわなければならない。
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