道成寺縁起
今年も長尺の絵巻物作品の修復から仕事のスタート。全長およそ16メーターを超える作品は、損傷こそ大きくはなかったが、料紙の接合を不用意におこなっており、広げてみると天地の辺は山あり谷あり、上に行ったりしたに下がったり、まるで蛇がのたくったかの様。さらにこの天地辺を整えようとしたか、後日適当に裁断をした様であるが、部分的に料紙が小さくなってしまっているし、とにもかくにも、収納時に巻子を巻き上げる際に、かなり無理をしないと小口を綺麗に整えて巻き上げることができなかった。
この作品には描画領域の上下に罫線が引かれていたが、この罫線も直線になっておらず、なかなか手強い。文化財の修理においては、本紙を裁断調整することは一切出来ないので、先述の裁断跡や凸凹の天地辺を整えるため、作品の天地に新たな紙を補填、増設して面積を増やし、この増設した部分を断ちしろとして裁断調整することで、巻き物全体を整える。
昨年末より解体、古い裏打紙の除去、変形を修正するための料紙の増設、虫損などの修理を終え、修復作業の山も越えてほっと一息の今日この頃。
思いを寄せた僧侶に裏切られた少女が大蛇になって、逃げる僧侶をどこまでも追いかけ、果てはその僧を焼き殺してしまうというちょっと怖い話。紀州道成寺にまつわる伝説が描かれている。
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