巻子【かんす】、巻き物の巻き方
巻子【かんす】というのは、帯状に裁断した紙や絹織物に文字を記したり絵を描き、その巻末に円柱状の軸木(巻き芯)を取り付けてくるくると巻いたもの。巻き物【まきもの】といった方が一般にわかりやすいかもしれない。ちょっとご年配の方ならば、時代劇の中で忍者が口に加えて煙の中から登場したり、一子相伝の剣術を認めた武芸帳など想像していただければわかりやすいだろうか。西遊記で三蔵法師が天竺から持ち帰ったのも巻き物にされたお経。昨今は世界的に日本のアニメがブームになっており、ベストセラーとなっている『ナルト』などでも、巻き物はちょこちょこと登場しているようだ。
巻き物は巻いて収納することによって、結構な量の文字や図像の情報が省スペースで保管出来るし、コンパクトになって持ち運びもとても便利になる(この技術があったから仏教(お経)が広く伝搬したという説もある)。巻いておけば書いた文字や描いた絵画は直接的に外界に曝されることもない。とても優れた装幀法だ。
今回は以下に巻き物の仕舞い方、紐の結び方ををいくつか紹介する。
写真1.は巻き紐を交差させて、交差している部分に紐の先端を二つ折りにして差し込む方法。この方法のみ、結び目は巻子と直交する。写真2.3.4.はいずれも巻き紐を平らに並べる様に巻き、紐の先端を巻いた紐の一部か、全てに通して(くぐらせて)固定する方法。いずれの方法も間違いではないが、箱に収める際、長く収納しておく際は、写真1の結び方は避けたほうが良い。この結び方は、紐が交差した部分が盛り上がり、収納時に箱の内部で接触したり、巻き物本体を部分的に圧迫するのでよろしくない。
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