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2014年10月

2014年10月24日 (金)

シミをのぞいてみる

写真は冠水した屏風。もともと埃など堆積していた様子で、屏風の表面に貼られた用紙の染料とともに汚れも流れ出し、醜いシミとなってしまった。このような事故が発生した場合、何もせずに放置しておくと黴が発生して、さらに大きな被害となるので注意が必要だ。

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シミになった部分を顕微鏡で観察すると、黴の胞子やその死骸が確認されることがある。黴が発生するとこの胞子を餌とするダニなどの害虫もやってくる。

通常の室内空気には、多いときで数千個に及ぶ黴が浮遊しているといわれる。黴はガラスやプラスチックなど、無機物の上にも繁殖する。壁にかけたまま、長く放置している額があったら、一度ガラスを観察してみよう。ガラスに斑点状の曇り、影の様なものが見えたら黴の発生が疑われる。床の間の壁は帯湿しやすいので、長期間掛けられた掛軸も、背面から黴が発生しやすい

2014年10月17日 (金)

肌上げ -古い裏打ち紙の除去作業-

薄い和紙や絹織物に伝統的な技法で描かれる東洋の書画は、このままでは不安定で保管も利用も出来ないので、背面に糊付けした和紙を何層か張り合わせ(この作業を『裏打』【うらうち】という)、これを掛け軸や巻物にしたり、屏風や額に装幀するが、修理が必要となった際にはこの裏打ち紙を取り除く。作品の裏に最初に裏打ちする紙を肌裏打ち紙と呼び、これを除去する作業を肌上げと呼ぶ。

私たちが修復する作品の多くは、遥かな年月を経て脆弱なものも多く、作品直下よりおこなうこの作業は長い時間と大きな緊張を強いられることも少なくない。

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写真は『押し隈【おしぐま】』といって歌舞伎役者の化粧を薄い絹織物に写し取ったもの。もともと化粧には絵の具の様な定着剤(接着剤)が配合されていないので、定着力が弱い上、支持体となっている絹織物(絖【ぬめ】などと呼ばれる細い絹糸で織られたものが多い)はとても薄く、不用意に裏打ちを剥がすと写した化粧も絹織物の糸目も簡単に歪んでしまう。

裏打ち紙を剥がす為には背面より水分を与えることで接着剤を緩ませるが、必要に応じて作品画面側より事前に表打【おもてうち】(表側に仮接着用接着剤を塗布した紙を糊付けする)して養生、固定し、小さな範囲で、必要最小限の水分を与えながら裏打ち紙の除去作業を進める。裏打ち紙は剥がすのではなく、産毛もつまめる様な精密なピンセットを使い、紙繊維を少しずつつまみ上げる様にして取り除いてゆく。

2014年10月16日 (木)

熱して剥がす

戦後間もないころ、日本はアメリカの占領下にあったため、郵便物は検閲の対象として無断で開封され、検閲後はGHQが開封した印としてスタンプを押し、開封した箇所に接着テープを貼って再封印した。これはそんな戦後の記録資料。

劣化した接着テープ(セロファンテープの類い)は接着剤が変質、溶解し、被接着物を汚損させることが多く、除去、廃棄するが、このテープについては資料製があるものと判断し、分離の後に別に保管する様にした。接着テープの接着剤にはいろいろな種類があり、全てに当てはまるものではないが、セロテープやガムテープ、いろいろな製品に添付されるラベルシールなども、加温することで接着剤が緩み、剥離しやすくなる場合が多い。

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◎専用の加温装置でテープ部を暖めているところ。

この装置には健常部、不要な箇所に熱風があたらない様に細い吹き出し口を装着している。

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◎検閲により開封された跡。

テープにはOPEND BY MIL.CEN.CIVIL MAILSと印刷されている。 

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