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2011年11月

2011年11月15日 (火)

文化財とデジタルの明日

11月1日、東京写真美術館ホールで開催された画像保存セミナーに出席してきた。このセミナーでは、写真や動画の記録、保存方法、修復にまつわる研究発表が毎年のように行なわれている。とくにここしばらくは、急速な画像(動画も含めた)のデジタル化が進んでおり、現像されたフィルムや印画紙に加えて、デジタル化されたデーター自体を長期保存するための研究が盛んだ。
社会の中でどんどんデジタル化が進んでゆくと、実物を不要とする世界、分野では物の生産を極力避けるようになる。いまや音楽はネットからダウンロードするのもあたりまえの時代。最近、書籍をダウンロードするようになったのも周知の通り。写真の世界を観れば、デジタルカメラの普及やカメラ付き携帯電話の進化も相まって、フィルムの利用も減るばかりな様子だ。
デジタルデーターの保存には、ハードデスクやCD、DVD、BR(ブルーレイディスク)などを利用することが多いと思うが、よほど厳密な環境において、正しい利用に努めていない限り、一般の利用や環境においては驚くほどその寿命が短命なことがわかっいる。それでなくても、コンピューターもソフトウエアもどんどん進化を続けていて、ちょっと前のデーターがどんどん古くさい陳腐な物になりさがり、ほんの数年経つだけで(そのままでは)利用さえ出来なくなることも、パーソナルコンピューターの利用者の多くが経験していることかと思う。
今日、文化財と呼ばれる物の中には、かつて必要なのなくなったもの、捨てられた物も多い。その最たる物が埋蔵文化財として、大きいものならば住居跡や城跡、人骨、化石に始まり、装飾具に武器、什器の破片や文字記録など様々な物が地中から発見されている。それらは完全な形で発掘されることもなく、ほとんどが残骸のようなカケラばかりだが、はるかな歳月を越えて、古代の人びとの生活や創造など、様々な事象を今日の私たちに伝えてくれることは、まさに脅威と言えるだろう。はたして、よく観れば見るほどに、私たちが知覚出来る影も形も(カケラも)ない今日のデジタル世界は、未来の人びとに脅威と感動を与えることができるだろうか。

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