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2011年7月

2011年7月25日 (月)

陶磁器の修復法

陶磁器(とくに茶器)には独特の修理法があって、景色【けしき】と称して修理した痕を金や銀で装飾する。この金継ぎ【金継ぎ】という修理法は、漆と小麦粉(人によっては炊いた米など使う)を接着剤として割れた部分を接合し、欠けた部分には漆に砥の粉など加えたパテ状のものを埋め合せ、乾燥、固化した後に金粉や銀粉を使って漆芸の蒔絵よろしく装飾する。漆は伝統的に長く食器にも使われてきたし、耐水、耐薬、耐熱性(人が飲食可能な程度の温度)にすぐれ、金や銀は歯科医が義歯材料として使ってきた実績もあるので、実用食器として食品を盛りつけたり、飲食時に口を付ける器への利用は、もともと安全で理にかなっている。
私の工房でも、望まれればこの金継ぎ方法を用いることがあるが、現在では大きな欠損部分の再生や、割れた破片や断片同士の接合には合成樹脂を利用している(この上から漆と金粉による装飾、塗装もできる)。合成樹脂は種類も豊富で、漆よりもコントロールがしやすく、高い修復精度が得られる。合成樹脂は顔料と自由に混合できるものもあり、破損したも物の材質によっては、損傷痕がほとんど目立たぬように修復できる。
Kinjiro
沖縄の陶芸家、金城次郎作の湯呑み
実用品であるが、損傷が器の外側にあることに加えて割離した断片が一部残存していたため、修復後に露出する合成樹脂の面積も小さくなることから、衛生面でも安全であると判断して合成樹脂を使用した修復を行なった。

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