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書画の額にはいろいろな様式があって、作品のセット方法も様々だが、安価に仕上げるための方法として、作品をガラスに密着させて挟み込むようにセットする方法がある。額に装着するガラスには、鑑賞性を保ちながら作品を直接的な接触による損傷や大気中の汚れから保護し、温湿度変化の緩衝材としても役立つが、密着させた場合は、温度の変化も伝わりやすくなるし、急激な温度変化によって結露が生じた場合には結露の逃げ場もなくなる。この結果、最悪の場合は、作品の材料、素材が変化、変質して、絵の具や墨、画用紙などがガラスに接着してしまうことがある。元々、絵の具や墨には顔料を固め、画布、画用紙に接着させる接着剤の役割をする展色剤と呼ばれる樹脂が含有しているし、画用紙にも描画描線を定着させる膠などの接着成分を含んでいることがある。ポスターなどの印刷物も張り付くことがあるので、大切なものは注意してほしい。
料紙の一部がガラスに接着してしまった例。元々経年の劣化と損傷が著しい資料であったため、料紙の表面が剥離していた。作品とガラスの分離にはいくつかの手段と方法があるが、こうなってしまったら修復処置はきわめて難しい。