野球と酸性紙の関係
ロージンバッグ(正式にはロジンバッグと呼ぶ)というのをご存知だろうか。野球好きの方ならすぐにピンとくると思うが、ピッチャーが滑り止めのために手にはたく粉が入っている袋のことである。中身は炭酸マグネシウムの粉末と松脂。松脂のことを英語で【rosin】というのでこの名がついたようだ(でも実際松脂は総量の15%程度しか入っていない)。松脂は言うまでもなく松の木から抽出された樹液のことで、これが化石になったものは琥珀【こはく】。
このロジンは、1850年頃から紙の滲み止めとして、それまで使われてきた膠(こちらは動物の骨や皮から煮出したコラーゲン)に取って代わり使われるようになった。ロジンはいったん苛性ソーダなどに溶かして紙料と混ぜ、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)を加えることで紙にしっかりと定着するが、ここで含まれた硫酸成分のおかげで紙は酸性となる。紙は酸に弱く、酸は経年とともに紙繊維の結合を緩ませ、破壊へと導く。日本では問題視され始めた1980年代以降、中性紙の生産、利用を積極的にはじめたが、これまでにつくられた酸性紙、酸性紙でつくられた書籍の類いは膨大な量。今も大きな問題となっている。
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