屏風のはなし ー屏風の数え方ー
伝統的工法によって制作される屏風は、杉の角材で組んだ格子状の骨組に和紙を貼り重ね、この上に書画を描いた料紙や織物、金箔や銀箔などを押した紙を貼った物を1単位として、紙製の蝶番で何枚かつないだ物。通常、二枚、四枚、六枚と偶数枚の構成とし、二枚の物を二曲【にきょく】、四枚を四曲【よんきょく】、六枚を六曲【ろっきょく】と呼ぶ。
何曲であろうが、それ一点で成立している場合、一隻【いっせき】と数え、2つ一組で成立する場合は一雙【いっそう】(『一双』に同じ)と呼び、数える。ちなみに、独眼竜正宗は隻眼【せきがん】。もはやご年配しか知らない時代劇のヒーロー?丹下左膳は隻眼、隻腕【せきわん】。ちなみに、『隻』【せき】は ひとつ という意味。
歴史を観ると、およそ鎌倉時代までは六曲の屏風を一隻で利用する事が一般的であったが、後に二曲や四曲、八曲(今ではまず目にすることは無いだろう)の屏風もつくられた。室町時代より二隻を単位(一組)としたものが流行り出したようである。
かつて、武士が切腹をする折には白い無地の紙を貼った四曲の屏風を後ろに置いて、ことが済んだらこの四曲の屏風で囲んだ習わしがあって、四曲の屏風を死人屏風【しびとびょうぶ】などと称して、金屏風であれ、無地の何も描かれていない四曲屏風は、縁起をかついで忌み嫌われたと聞く(必要なら二曲を二組、一雙で利用した)。
屏風は広げたところを上から俯瞰してみると、ちょうど扇を広げたようになるためか、屏風の右側の画面より、一扇【いっせん】、二扇【にせん】、三扇【さんせん】、、、。と数える。
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突然ながら、お尋ねしたい事があります。こたび、娘が明治記念館で結婚披露宴をする事になりました。若竹の間で行います。そこには、二条城の絵を補修した人のお弟子さんが平成6年に描いたといいます。六曲一隻風の絵が掲げてあります。式場に問い合わせたら分からないとの事でした。もし、どういう作者がお分かりなら、教えてくだされば幸いです。
投稿: 斎藤和良 | 2017年6月13日 (火) 12時23分
お問い合わせをいただきありがとうございます。
誠に申し訳ございませんが、本件につきましては情報がございません。二条城の修復に関わりがあるのであれば、京都府教育委員会、または文部科学省(文化庁)にお問い合わせされては如何でしょうか。
投稿: 祐松堂 | 2017年6月14日 (水) 14時46分
初めてこちらのHPを拝見しました。
八曲の屏風はもう目にすることはないと書かれていましたが、八曲の読み方はどう読むのでしょうか。「はちきょく」「はっきょく」いづれでしょうか?
また、読み方について書かれた書籍などありましたら、教えて頂ければと思います。
投稿: ウサギのダンス | 2017年11月25日 (土) 17時47分
コメント、ご質問頂戴し、ありがとうございます。
私見になりますが、六曲屏風を『ろくきょく』と読まずに『ろっきょく』と読む事からすれば、八曲も『はちきょく』ではなく『はっきょく』と読む方が自然かと思います。
申し訳ありませんが、屏風曲数の呼称について記述された書籍は存じ上げません。
投稿: 祐松堂 | 2017年11月27日 (月) 14時26分
ご回答ありがとうございました。ちょっとしたことから調べることになったのですが、そのきっかけを機に屏風の世界を垣間見ることができたこと、何よりでした。
投稿: ウサギのダンス | 2017年11月27日 (月) 16時54分
屏風の数え方の記事、興味深く読ませていただきました。
ところで、「曲」の呼び方は何に由来するのでしょうか。ネット上でいろいろ調べてみましたが、そのことに触れた記事が見当たりません。
ご存知でしたらお教えいただけませんでしょうか。
投稿: NAO | 2018年4月23日 (月) 10時25分
『曲』の呼び方の確かな由来はわかりませんが、屏風の構造として屈曲する画面が何面あるかを示しているものと理解はしています。ちなみに四曲の屏風は蝶番が3カ所、六曲の屏風には5カ所設置されますが、屈曲する支点を数えるのではなく、画面を数えることが慣例になったのだと思われます。
投稿: 祐松堂 | 2018年4月23日 (月) 12時37分
早速のご返答ありがとうございます。
面を表す言葉として、別の表現世界に曲という言い方があり、そこから来たのかなと思っていたのですが、やはり「曲がり」に由来する「曲」なのですね。
ありがとうございました。
投稿: NAO | 2018年4月23日 (月) 23時28分