裏打を剥がす
伝統的に日本の書画(例えば巻物や掛け軸になっているもの)は、その背面におよそ2~3層の『裏打ち【うらうち】』が施されている。裏打ちとは簡単に、薄い手漉き和紙に小麦粉のでんぷんから作った糊を塗布し、作品の基底材となる料紙や料絹の背面全体に貼付ける作業(通例で貼付ける紙を指すこともある。貼付ける紙を裏打ち紙ともいう)。作品が傷み、あるいは劣化して修復が必要ないなった際は、この裏打ち、裏打ち紙を除去する必要が生じる。裏打ちの除去作業は、利用された接着剤の特性を生かして、水分を与える(湿らせる)ことで接着剤が膨潤して柔らかくなり、取り除くことが出来るようになるが、工房に持ち込まれて来る作品の多くは、激しく虫に食われて、レースのカーテンの様になったり、ぼろぼろと絵の具がはがれ落ちたりするような物が少なくなく、大変な作業となることがとても多い。
◎虫食いの被害にあった資料。残存する部分を痛める事なく裏打紙を除去するのは、結構な手間がかかるし長時間の集中力も必要になる。
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