アール・ブリュット
私の友人のご子息は、父親の影響もあってか、いつか絵を描くととに目覚め、それから毎日のように、今も絵を描き続けている。あるとき、ご自宅で見せていただいた映像は、ただ黙々と画洋紙に向かい、何枚も何枚も描き続ける彼の姿だった。いつも使っている机には、画用紙からはみ出した絵の具やクレヨンのあとが幾重にも重なっていて、使い尽くして小さくなったゴミ袋一杯のクレヨンは、彼の表現の軌跡と、創造力の大きさ、激しさを物語っているようだった、、、。
フランスの画家ジャン・デュビュッフェは、当時誰もが芸術家としては認めなかっただろう社会からの脱落者や排斥者、精神病院や監獄などに収監された人々が制作した作品を収集し、これを『アール・ブリュット』と名付けた。アールはフランス語で芸術。ブリュットという言葉は『自然のままの』とか『生まれたままの』という意味。正式な美術教育を受けず、伝統や既成の芸術概念にとらわれることのない彼らの表現は、私たち人間の創造力の源をたどるものとして、あるいは原初の芸術表現として捉えられることもある。
私には表現者の心の中を知ることはかなわないが、描かれた作品の数々に、私たち健常者に勝るとも劣らぬ創造力の強さと、豊かな表現、健常な芸術家をも凌駕する激しい情熱さえ感じて、心を揺さぶられるばかりだ。
●『イノセンス』ーいのちに向き合うアートー
2010年7月17日土曜日~9月20日月曜日(祝日)
於:栃木県立美術館
URL : http://www.art.pref.tochigi.lg.jp/jp/exhibition/t100717/index.html
Tel : 028-621-3566
●秋山俊也個展『ドローイング10000点展』
2010年7月14日水曜日~8月1日日曜日
於:蔵のギャラリー悠日
URL : http://www.vuiitsu.com/
Tel : 028-633-6285