虫干しをしてみませんか
今年の春先の寒さには参った。しまい込んだ冬物を出すのも面倒だし、4月になって冬物を着るのも嫌だった。でも、さすがに五月に入ってからはぽかぽかと暖かく、さわやかな日が続いている。一年のうちでも、比較的湿度の低いこの時期は、絵画や美術工芸品の虫干しに最も良い時期。長いこと押し入れやタンスの奥に、大切?にしまっておいた作品を出してきて虫干しをしてみよう。作品を出して来たらば、まずは表も裏も、表も中も、重箱の角を突っつくようにして、なめるように細かく観察をしよう。異常が見当たらなければ、日陰で、新鮮な屋外の空気が交換している場所にさらして、含んでいた湿気を飛ばす。注意しなければ行けないのは、この時期は結構風の強い日もあるし、落下や転倒の危険があるから、風の通り道になる様な場所には作品を置かないということ。作品をさらす場所は、事前に外気を交換した室内で行なう(できれば害虫の侵入にも注意を払って欲しい)。この折、収納箱があれば一緒にふたを開けて空気にさらそう。湿った作品が入っている収納箱は同じように湿っている。『干す』といっても、決して直射日光を当てては行けない。窓やカーテン、障子越しでも、太陽光線の中には紫外線など、退色や劣化を促進させる効果があるから、基本的に光は直接当てない様にしよう。また、急激に気温が上昇する様な非、時間も結露が発生する場合があるので気をつけて欲しい。
結露の危険があるので虫干しにおいて大切な事は、とにかく観察を徹底的に行うこと。そして、観察の結果を記録しておけば完璧。観察を定期的に行うことで、あなたはその作品を熟知することが出来るし、問題が発生しても、もしかしたら初期的な症状で早期発見できるかもしれない。押し入れにしまいっぱなしの物でなくても、床の間に掛けっぱなしの掛軸や、玄関にかけっぱなしの絵画、リビングの置物もちょくちょく観察して欲しい。
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