必要とされるアイディア
ちょっと前に、新潟の市美術館で四月下旬より開催予定の『奈良の古寺と仏像』展で、文化庁が国宝、重要文化財に指定している14点の展示を認めないと通知したという記事が目に留まった。同館では、2月の企画展で展示されていた物から30匹ものクモが発生。さらに、さかのぼって前年の七月にも展示作品にカビが発生して、すでに注意されていたことも、今回の物言いに影響しているようだ。クモの発生は展示物の消毒の不良であったというし、カビは空調を止めて湿度が上昇したためと、原因もわかっているようだから、きっと解決策は多々あろう。
私は開業修復家として、様々な施設から業務依頼を受けているが、昨今の経済不況は、全国の美術館や博物館施設にも大きな影響を及ぼしている。せっかく立派な施設を持っていても、いまや、空調装置を全館で、しかも24時間運転するなどとてもかなわないし、収蔵庫だけ空調装置を動かしている施設もある。美術品や歴史資料を管理する専門家を常勤で雇うことも困難な施設は少なくはないようだ。環境が整わない、人材もお金もない。そんな場所にこそ専門家の経験と知識を活かして、何かよいアイディアを生み出し、提供したいものだ。
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