額は絵画の保存ケース
掛け軸や巻物に代表される東洋の書画は、展示、利用している時間、常に作品がむき出しの状態になっている。これに対して、現代の日本画や油絵に代表される洋画、版画の類いは、額に納めて鑑賞することが多く、額の様式や作り方によっては、利用時も収納時も作品を額によって保護することができる。『納めて』と表現したのは、額は制作方法、構造によって、装着された作品を守る収納箱や保存容器としての性能を与えることができるから。東洋絵画も、西洋絵画も、セットする額の前面にガラスを装着し、背面を板などで覆えば埃よけにもなるし、密閉すればタバコや作品にとって有害なガスに対しても守ることができる。さらには、外界の温度や湿度が直接影響することもさ避けられるし、紫外線を吸収するような特殊なガラスを使うことで、紫外線による変色、退色の被害からも守ることもできる。
一方、額に使う材料やその使い方よっては、納める作品に悪影響を及ぼすこともある。ホルムアルデヒドなどのガスを発生させる集合材、不純物や酸性物質を含んでいるために変色したり、色素を作品に転移させるような材料もある。もしこのような材料を不用意に使って、さらに密閉性の高い額を作れば、額の内部は悪い環境となるばかりとなってしまう。さらに、どんなに良い額を作っても、展示場所や保管環境が悪ければ、また作品を痛める結果となる。温度変化の大きな場所におけば、額の内部に結露が生じやすくなり、結露はカビの発生を促す。直射日光にあたらずとも、紫外線を吸収するガラスを装着しようとも、何年もずっと展示したまま(放置?)にしていれば、変色や退色は避けられない。
額は値段が高ければ良いという物でもないし、額装さえよければ作品を完全に守れるというものでもないが、納める作品の性質を考慮して、質の良い、安全なものを選ぶことで確実に納める作品の延命効果を得ることはできる。貴重な作品の額装には、専門的な知識を持ち、なお丁寧に説明をしてくれるフレームショップを選びたい。