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2009年9月10日 (木)

伸びたり縮んだり

絵画の土台となり、文字や地図などを記すための基礎材料(私達修復家は支持体、基底材料などと呼ぶ)となる皮や板、紙、絹織物、麻織物などは皆、天然の動植物から素材を採取し、結構な手間をかけて加工したものが多い。天然素材から作られた材料、製品の多くは、製造後も私達の身体の様に適当な水分を含んでいて、外界の気温や湿度に応じて水分の吸排出を繰り返す。たいていは周囲の湿度が上がると吸収してその分だけ膨張し、周りが乾燥して来ると自ら持っていた水分を吐き出してその分収縮する。この結果として、伸縮、波打、反り返り、干割れや亀裂といった様な現象、症状を私達は目にすることが出来る(経年劣化による保水性の低下、硬化による症状の場合もある)。
現代の様に人工的な環境管理が出来なかったころは、基本的に自然環境の変化になすがままの状態であったが、今や私達は、そこそこの空間であれば、人工的に環境をコントロールできる様になって、一部の公共機関(完全な環境を常時維持しているのはほんの一部の施設のみです)では、この技術を貴重な文化遺産の保全に役立てている。
経済の長い低迷が騒がれる昨今では、日々の光熱費用も気になるし、エコな生活を目指す人にはCO2の排出も気になるだろうか。文化財の保全と環境の保全はなかなか相容れない?
やはり自然環境の悪化(破壊?)が原因なのか、ここ数年は季節のめぐりも不順に感じ、気温の変化(とくに温度上昇)も激しくなった様に思う。あまりの我慢もまた健康に良くないので、エアコンも上手に使いたい。とくにデリケートな美術品や工芸品は、急に大きな変化を与えないのが大切。温度調節をこまめにしましょう(今日はどこかの電力会社のCMみたい)。

Img_0513itaware経年の材料収縮によって接ぎ合わせ部が剥離した板木材は乾燥すると繊維(元の樹木の天地方向)と垂直方向に縮む。

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