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2009年6月

2009年6月25日 (木)

桐箱の話

日本では、大切な掛け軸や茶道具、美術品の収納に桐材でつくられた箱を用いることが多い。桐材というのは、吸湿、透湿性が低いために、外部の湿気の侵入を防ぎやすく、乾燥した際の収縮や膨張率も小さいために反り難く、つくった収納箱の密閉した環境が保てる事から、貴重なものを納める箱や家具の材料として重宝されてきた。さらに、非常に耐火性(着火温度が420℃!!)に優れているので、古くから金庫の内部材料としても使われた。
しかし、いくら桐箱とはいえども、作りが悪かったり、壊れて虫のはいる様な隙間が空いていたり(あるいは本当に虫が食っていたり)、変型していたりすれば、この性能を期待することは出来ない。 最近は、桐材風の材料もいろいろと市場に出回り、中には表面だけ桐材の様なものを貼付けた積層材、集合材(簡単にベニヤ板の様なもの)もあり、この種の材料には先述の性能は望めないし、材料に含んだ接着剤からは、納めるものに影響を与える物質が含まれている可能性も考えられるから注意したい。

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火災被害にあった収蔵庫から救出された仏画。表装の左側に焼失痕が見られるが、作品の全焼は免れた。この作品も、当時桐箱に納められていた事が幸いしたものと思われる。

2009年6月17日 (水)

虫干しの習慣

『虫干し』という言葉を聞いたことがあるだろうか? 広辞苑を調べると、『土用の頃、黴や害虫を防ぐ為に書籍や衣類を日に干したり風にさらしたりすること』とあり、ほかに、梅雨明けの晴天が続く頃に行うものを「土用干し」10月頃に行うものを「秋干し」11~12月頃に行うものを「寒干し」という。
かの正倉院でも、かつては伝統的(行事的?)に虫干しが行われて来たといわれる。 実際、夏の土用の頃は比較的に湿度も高く、あまり風通しには向いているとは言えないし、害虫も多そう。絵画などは非常にデリケートだから、直射日光に当てないようにするなど注意が必要だが、湿度が低い(天気がよくても湿度が高いと作品が帯湿してしまう)天気の良い日には、日陰で(必ず。光による退色や劣化の原因になります)風通しをすることは決して悪いことではない。桐箱などの収納箱もあれば、それも一緒にふたを開けて陰干しすると良いだろう。 そして、このとき、何より肝心なのが『目通し(観察点検)』すること。作品に変色などの異常はないか、虫が食っていないか、黴は発生していないか、絵の具が剥落していないか、先ずは肉眼でしっかりと観察し、さらにちょっとしたルーペなど使って細かく観察をすれば申し分はないと思う。 虫干しというのは、ただ作品を外気にさらすことだけを目的とするのではなく、ここで、日頃しまいっぱなしの『宝物』をしっかりと点検することをぜひ心がけていただきたい。
『虫干し』というのは、定期的に継続する習慣とすれば、自らが所有する美術品や資料をより深く知り、再認識する事にもつながるだろうし、専門的な知識や技術、道具(お金もかからない?)がなくても、誰もがおこなうことができるすぐれた病害予防策、保存対策となる。もちろん。異変を見つけたらば、私達修復家へご連絡を。

Img_9947hsenjyu小さな画像で見難いかもしれないが、掛軸装装幀された絵画作品を長く箱に入れたまま放置した例。黴が発生し、画面全体に『麻疹』の様な斑点状の変色を来していた。定期的な虫干しの習慣があれば避けられたかもしれない、、、。

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