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2009年4月 3日 (金)

アクティブな媒体

塵埃を払い、傷口を塞ぎ、いまにも剥がれ落ちそうな絵の具の破片をもとへ戻す。残るすべてを維持し、可能であれば、求められれば、本来の姿形、機能を回復させ、蘇生させる。さらに年月を耐え得る様に、知識と経験と、そこに裏付けされた技術を尽くす。私達修復家は、その創造者と同じか、それをはるかに超える長い時間、修復対象と向き合う。
創造者がそこに刻み、記した人生、情熱と希望、美学、哲学。そして、それを所有し、利用してきた人々がそこに見出し、投影した価値。積み重ねられた歴史。私達修復家は、いま、そこに読み取ることのできるすべての情報を未来に伝えることが使命。ある修復家は、この活動を『媒体』と表現した。私は、日々この使命に真摯に立ち向かう同朋の姿を見て、そして私自身も、なんと能動的な媒体かと思う。


Img_9749
写真は、作品の裏面から光を当て透過光線撮影したもの。中央に人為的に四角く切られた痕とそれを埋める為の補修紙が貼られ、補助的彩色が行われていた。おそらく、修復作業の効率を上げる為に傷んだ部分周辺を整理、裁断したものと推測するが、現在ではこのような『整理』は破壊と見なされ、一切行なわない。

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