フォト
無料ブログはココログ

« 紙を蝕むインク | トップページ | 東洋絵画の装幀『表具』のはなし »

2008年12月12日 (金)

抜け殻を観賞する

現代の博物館や美術館では、かつて宗教信仰の対象であった仏像や、教義を記す教典、仏教の世界観を表す絵画などが並べられ、仏教美術として観賞の対象となっている。ここでは、展示されている仏像を拝む人は稀だし、読経をあげる人となると皆無に等しいだろう。宗教に関心のない者、信仰のない者にすれば、それは古典的な彫刻であり、文字記録、絵画であるに過ぎない。
香の臭い漂う荘厳な寺院の中から、空調の完備されたハイブリットなガラスケースの中に納められた瞬間に、宗教、精神世界の拠り所から、歴史、美術品へと変貌し、その新たな価値が付帯され、さらに多くの人によって、また新たな価値イメージが投影される様になる。
仏像の修復を行う場合は、いったん魂を抜く儀式をしてから『物』にして、修理後にもう一度魂を入れ直してもとの仏像に戻す。博物館に展示されている仏像や仏教美術品というのは、ただの抜け殻なのだろうか。

Img_8189

« 紙を蝕むインク | トップページ | 東洋絵画の装幀『表具』のはなし »

文化・芸術」カテゴリの記事

保存修復」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 抜け殻を観賞する:

« 紙を蝕むインク | トップページ | 東洋絵画の装幀『表具』のはなし »