東洋絵画の装幀『表具』のはなし
一般に、伝統的な技法で製作される東洋絵画(日本画を含め、韓国や中国絵画など、さらに揮毫作品、名僧の墨跡なども含めて)は、その特徴として、薄い紙や透けて見えるような絹織物に描かれていることが多い。このままでは持ち運ぶことはもちろんのこと、鑑賞するのもなかなか難しいし、簡単に折れたり破けたりもする。そこで、このデメリットを克服するために裏打ちをし、軸木を取り付け、観賞するときには平に広げて、しまうときにはくるくると卷ける様にもした。これがいわゆる表具(ひょうぐ)。表具は、別に、表装(ひょうそう)、経師(きょうじ)、装こう("そうこう" の "こう" は『さんずい』に『黄』と書く)などと呼ばれ、その技術と技術者の呼称、またはその職業を指し、あるいは装幀されたものを表具、表装と呼ぶ時もある。
表具に関する古代の歴史資料はとても希少で、よほど大きな書店でも目にすることはなく、体系的に記されたものもまず見当たらない。それでも数少ない資料を見てみると、その起源は昔、遣唐使などが中国あたりから持ち運んだ経典の管理(手入れ)をすることから始まったようだ。それは、経典を写し取る際に用いる紙に罫線を引く仕事からはじまり、" 罫線を引く人" が " 経師"という語源になったと言われることがある。教典は日々の仏事で利用するわけであるから、使っているうちにだんだんと傷んでくる。大切な物であるから、粗雑な扱いこそすまいが、長い間に過って破いたり、折れたり、汚したりすることもあるかも知れない。傷んで使い難くなるたびにそれを整え、簡単な修理をするような仕事が、いつか進化して現在に至ったものと思われる。当初は、宗教関係者が教典を管理していたので、ここに『経』や『師』の字が使われた由来もあるのだろう。
そろそろ師匠も走り出す『師走』。
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