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2008年12月 1日 (月)

美術品の梱包と搬送 その1.

展覧会も多くなる秋口から、閉会、企画替えとなるこの頃、輸送事故を巡るトラブルで、作品がちょくちょくと持ち込まれる。傷んだ作品のほとんどは、梱包の不備(あるいは無頓着?)と思われるものが多い。
梱包にはいくつかの方法と考え方があると思われるが、まず、対象をしっかりと固定して、搬送中に容易に動かないようにすること。これは地震災害の時の転倒事故、落下事故対策にも通じると思う。搬送時に複数のものを運ぶならば、なおさら相互が動いて当たったり干渉しないようにすることが肝心だ。ただし、そのものが容易に色落ちしたり、脆く壊れ易いもの、ちょっとした加圧で変型するようなものにはこの方法はあてはまらない。この場合は、以下の第二、第三の方法を組み合わせるなど工夫する。

第二にショックの吸収。透明フィルムで小さな空気の粒を閉じ込めてあるエアーキャップ(プチプチのやつ)やウレタン素材を纏わせて、外界からの物理的な衝撃に備える。

第三に、先の尖った物、針や釘のようなものの接触に備えて、板や段ボールなどで覆う方法。これに、冠水事故を考慮した場合は、さらにビニールなど水をはじき、内部に浸透させない物で覆うと良いだろう。
ビニールなど、通気性の無いもので密閉した場合は、外界の温度が急変した場合に、内部に結露を来すこともあるので、温度差の大きな地域間の輸送には注意が必用。こんな時は、湿度を吸収する紙や布を第一層として作品を覆って緩衝材とし、対象物に直接、急激な変化を与えない様にすると良い。移動先の温度差の大きい場合は、梱包をすぐに解かず、少しずつ時間をかけて開梱し、納めた作品に移動先の環境に『慣らす』時間を与えよう。急激な温度、湿度の変化は、作品の材料素材を急激に伸縮させたり、最悪の場合、大きな破壊をもたらす結果となる。
当たり前のことであるが、梱包に利用する材料は、対象を汚さないためにも、できるだけ清潔な材料を利用しよう。また、梱包材料として市販されている商品の中には、長期的に安定しない物もあり、接着、癒着したり、有害ガスなどを発生する物もあるので、とくに対象に接触させる物については、出来るだけ安全を確認して利用すると良い。また、梱包したまま長く放置する様なことは絶対にしてはならない。
最近は美術品を専門に搬送する業者も増えてきたが、不安に思った時は専門家に相談して欲しい。

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