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2008年11月

2008年11月28日 (金)

九州国立博物館探訪記

今年の5月、所属している団体の研究発表会が福岡の太宰府近くであって、九州国立博物館を訪れる機会があった。この博物館は、菅原道真を祀る太宰府天満宮を左手に通り過ぎ、小高い丘を長いエスカレーターで越えたところにこつ然と現れる。
私は学会の計らいで、施設を紹介するバックヤード・ツアーに参加して、その内部や裏側を見せてもらった。九州の国立博物館施設は、建物が二重構造になっていて、緑の山並みを映し出す大きなガラス張りの外殻の中に、コンクリート製の頑強な建物が免震装置の上に乗るようにたてられている。貴重な文化財を保管する収蔵庫はこの内側に、さらに二重、三重の空気層と内壁に守られている。最新の免震装置、高性能の空調設備に加え、修復室や研究室にはまばゆいばかりの最新の機材が備えられていた。大きなエックス線解析装置、眼科医が利用する高性能実体顕微鏡、三億画素!を誇るデジタルスキャナー、スキャニングした立体物のレプリカを瞬くうちに形成する装置等々、、、。とにもかくにも、通常では入手すら困難なスペシャルで高価な機材ばかり。
そんな、ちょっとウラヤマシイ環境を拝見しているとき、あるシンポジウムで紹介された研究機関の話を思い出した。そこは写真に関する研究をしている施設で、デジタルカメラの隆盛に伴って、カメラはもちろんの事、画像データを出力するプリンターや、プリントを複製するデジタルスキャナーの研究も行っていた。紹介された機材は、購入当時最も優れた性能を持った最先端のもので、それこそ目が飛び出る様な高価なものであったが、購入して数年で、さらに進化した器機が販売され、すぐに使い物にならなくなったという。私自身も、おそらくデジタル器機を扱う人は皆経験があると思うが、コンピューターもデジタルカメラも進化のスピードがとても速い。昨日かったばかりの最新型が、あっという間に低性能になり、作ったデータも陳腐化してしまう。私も仕事上、デジタルカメラをよく使う様になったが、数年置きには買い替えないと役に立たない。デジタルカメラの性能が上がると、急激に増えた情報を高速で処理するコンピューターも必要だ。減価償却するのはまた困難になって来た。上がる性能の割に、値段が据え置きなのはうれしいけれど、、、。

選べなくなった商品

私達が日頃利用する材料の多くは、非常に専門的なものが多く、広く市場に出回っているモノは稀だ。もともと文化財保存、修復界自体の需要、マーケットも小さいし、そこへもってなお、一つ一つに使う量もたかが知れている。使う側にしてみれば、保存や修復処置対照となる物が千差万別であるから、同じものを沢山使う事はないし、必要に応じて色々な種類を少しずつ購入したいということもある。
かつては、年間を通じて結構な量を使っていたので、購入に際してはいろいろと細かな注文や文句を聞き入れてもらって、少量でも別誂で希望の品をつくってくれたりもした。最近は購入量も減ってか、商品のバリエーションも乏しくなり、入手の難しい物も少なくなくなった。厳しい要望や、文句を言っても『みなさん使っています』とか『文句を言う人はすくない』などと言われることもある。確かに、その『みなさん』もずいぶんと少ないだろうから、『文句を言う人』もきっと少ないというのは道理にかなっているのかも知れない。
生産者も利用者も、双方にいろいろと意見を交わし、試行錯誤もし、良い緊張感の中で、せめぎあう。そんな関係の中で守られ、つくられる良い商品とその品質であると思う。

2008年11月27日 (木)

早期発見の重要性

私達の体も絵画や彫刻などの美術品も同じ。古文書等の歴史資料も皆、異常や損傷等の問題は出来るだけ早期に発見したい。問題を早く発見するほどに、あるいは処置を必要としても、きっと軽微な作業で済む。その後の管理も、利用も楽だろうし、下世話な話になるかも知れないが、もちろんお金もかからない。 『出来ることなら何もしないに越したことはありません』そういってしまえば、私達専門家の出る幕は無くなるが、これは本当の話。人も美術品も健康を保つために、まずはしっかりと日頃の管理をしたい。

Mtfuji

◎一面に黴が生えてしまった作品。こんな風になるまでにはずいぶんと放っておかれたに違いない。

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